廣田　有吾　（会員）

　ろうそくの明りのもと旧乾邸でクリスマス・コンサートをとの提案があった時、

思わず「ンー」と唸ってしまった。

旧乾邸の吹き抜けのゲストルームには暖房設備がなく、１２月の夜のコンサートはとても

冷え込むはず。

しかし、厳寒期でもないので、隣接する部屋の暖房を昼間から点け続ければ、ゲストルームも

結構温まると思うとの意見に気を取り直し、取り組む事となった。


　演奏者は、リュートの高本一郎さんとソプラノの樋口美紀さんに決まり、樋口さんは秋の

旧乾邸の内覧会に参加、コンサート会場の下見をしていただいた。


　いよいよ当日になるとこの冬一番の寒い日、時々雪が舞う有り様。

しかし、ゲストルームに続く部屋の暖房を全開にし、持ち込んだ電気ストーブを暖炉に仕込み、

石油ストーブも点けるとなんとか暖かい。

ほっとして会場の設営を進める。

そのうち演奏者が到着、簡単な打ち合わせ、楽譜が読めるようにろうそくの調節等の後、

入念なリハーサルが始まった。

階段ホールにもクリスマスの飾り付けがされ、主人のいない館も今日ばかりは華やか。


　コンサートの開始。

演奏者の登場の少し前から電灯を消し、お客さんにろうそくの明りと暖炉の温もりの雰囲気を

楽しんでいただく。

柔らかなリュートの響き、澄んだソプラノの声、親しみ易い高本さんのおしゃべり。

樋口さんは、会場を上手に使われ、階段の上からの歌声は空中を漂っているかのよう。


　コンサート終了後、演奏者とスタッフはささやかな打ち上げ。

その際、高本さんより「ゲストルームの響きはすばらしい。普通と違い、お客さんが

入られてからの方が音が良くなった」との感想をいただく。

最後に、高本さんのリュートの伴奏（なんと贅沢な！）により、全員で「きよしこのよる」を

合唱。